「これから、どうなる? どうする?」完全版?

「さわイン」157号巻頭に掲載しご好評いただいた文面に、字数制限で割愛した分を加え、説明不足の部分に具体的内容を書き足して、増補改訂完全版(?)といたしました。以下です。少し長くなってしまいましたが、是非お読みください。

未曾有の大震災から1カ月余。私たちは今後どう考え、どうしていけばいいのでしょうか? そこで、そのヒントになる情報をいくつかご提供したいと思います。

◆地球1個分で生活しよう

私たち人類は、実はいま地球の再生産能力の1.5倍の消費生活をしています。これは貧困にあえぐアジアやアフリカ地域の現状も含んだ数字です。もし、世界中の人が日本人と同じ生活をすると、地球は2.3個いる勘定となります。もし、世界中の人がアメリカ人と同じ生活をすると、地球は5個以上いる勘定となるのです。

この指標は「エコロジカル・フットプリント」と言い、世界自然保護基金(WWF)が2年毎に発表していますが、すでに地球は持続可能でないということを意味しています。わかりやすく言い換えると、「これまで私たちは、自然の利子で生活してきたのに、いまや元本に手をつけてしまった」ということです。大人が子どもたちの未来を先食いしているのです。

そこで、この震災を機に「もったいないから節約」を、当たり前のライフスタイルにしませんか? そして、節約した分を、被災者に少しでも多くまわせればと思います。他にお勧めなのは「アンペアダウン」。いまの電力不足は、使用時のピークに対応できていないだけです。家庭でも、契約アンペアを下げることで、電気の無駄な使用が減らせ、家計の節約になるだけでなく、ピークカットにも大きく貢献できます。原発を増やす必要もなくなります。

60A(アンペア)から30Aまでは、10A下げる毎にごとに基本料金が273円安くなります。生活文化NGOのナマケモノ倶楽部が、「アンペアダウンプロジェクト」というホームページをつくり、普及・啓発活動をしていますので、のぞいてみてください。

◆自分の出したお金の使われ方を考えよう

義援金は、被災程度に応じて公平に分配されますが、分配されるまで時間がかかります。自治体の機能が停止・低下するなかで、早急に「公平」に配分するのは容易でないことは理解できますが、一次分の配分金額決まったとはいえ、5月14日現在、いくら調べても、いまだ1円も支払われていません。

これに対し、被災者を支援するNPO活動は、対象は限られますが、現場の状況に応じ、必要とするものを必要とする人により早く提供しています。そこで、義援金だけでなく、そうしたNPOへの支援金も考えたいものです。

たとえば「東日本大震災つながりぬくもりプロジェクト」という活動があります。これは、ソーラーパネルや太陽熱温水器などをパッケージにして被災地に提供することで、明かり・電源・お湯・お風呂などを利用してもらおうというもの。単なる支援ではなく、小規模ながらも、既存の電力に依存せず、エネルギーの地産地消を実現している点が素晴らしいと思います。
すでに14箇所に設置されています。

また、私たちの寄付は「赤十字なら安心」と深く考えずそれ終わりにしがちですが、これに限らず「銀行に預けたお金や納めた税金など、自分が出したお金はどう使われているのか」にもっと関心を持ち、「どうすれば自分のお金が活かされるのか」を考える習慣を身につけたいものです。

たとえば、私たちは銀行に対し、使い方はほとんど「白紙委任」してお金を預けていますが、大手金融機関は、もっぱら大手企業にばかりお金を融資しています。軍事産業や社会的問題を起こした企業に融資している場合もあります。これに対し、ろうきんは主に労働者に、信金は主に地域の中小企業に融資しています。そうした意味で、安易にその銀行が有名だからという理由で預けるのではなく、自分の預けたお金をどう活用してもらえるかも考えて、預ける先を決めたいものです。「あなたのお金が世界を変える」-そうした活動をしている国際青年NGOアシードジャパンによるサイト「エコ貯金ナビ」も是非参考にしてください。

また、株を購入するときも同様です。単に、利殖のために高配当ばかりを期待するのではなく、社会的に意義ある活動をしている企業を応援するという視点で購入することで、投資したお金に意志をもたせることができます。本来、株とはマネーゲームのツールではなく、そういうものであったはずです。

さらに、最近注目されているのは市民金融です。たとえば、すでに全国に10以上ある市民風車。これは市民から出資を募り、売電収入で返済する市民ファンドの仕組みです。また、社会貢献事業に融資するNPOバンク。これもすでに日本各地に10以上あり、こげつきなどほとんどなく、健全に運営されています。そのひとつ、天然住宅バンクでは、今回の震災への取り組みとして「仮設じゃない『復興住宅』プロジェクト」を立ち上げています。

◆自然エネルギーにシフトしよう

原発問題を考えるうえで知っておきたいことがあります。それは、原発で働いている人の放射線許容基準は一般人の100倍であるということです。つまり、原発が正常に稼働し原子力が「平和利用」されていても、被曝は避けられないのです。被曝するのはいつも地元の弱者なのです(このあたりの詳細は、こちら記事の文末=「Sさんの疑問に対する補足」もご参照ください)。

また、原発から出る放射性廃棄物(=「死の灰」)は、全く処理できないのに増える一方です。日本には、54基も原発があるというのに、それら原発から出る「死の灰」の最終処分地が決まっておらず、「トイレなきマンション」という比喩もあるほどです。これまで、中間貯蔵地として青森県の六ヶ所村に持ち込まれていましたが、すでに満杯で、「死の灰」は各地の原発に滞留しており、危険度は増しています。

さらに、最終処分地が仮に決まったとしても、何十年、何百年、いや半永久的に厳重に管理する必要があり、経済的にも採算がとれません(現在、フィンランドでのこの問題を扱った「10万年後の安全」という映画が公開中です)。その処理には、六ヶ所村の再処理工場の費用も含め、少なくとも18.8兆円の費用がかかることが明らかになっており、この費用は、安いと言われる原発の発電コストに含まれていないのです。

いまここで、原発を増やさず段階的に減らし、予算を分散型の自然エネルギーの開発・普及に振り向けていけば、放射能の心配は減らせ、地域活性化にもつながります。今年3月、スペインでは、風力発電による電力供給量が4割となり、原子力や水力を越え、最大の電力源となりました。また、ドイツでは、一時的ながら、太陽光発電による電力供給量が、原発による供給量を超えました。

こうした国が、風力や太陽光に力を入れ始めて、まだ10数年程度でしょう。太陽光発電で世界をリードしてきたはずの日本。世界の動向はとっくに自然エネルギーなのに、「国策」としての原子力にこだわり続け、遅れをとってしまいました。でも、いまは、ピンチをチャンスに変えるときです。日本が、やればできないはずはありません。