11/23◆「横浜読書百貨展」@横浜市開港記念会館 レポート

昨年・一昨年に続き、横浜市主催による読書活動推進イベント「横浜読書百貨展」が、2016年11月23日(祝・水)に横浜市開港記念会館で開催されました。

午前に市内8区代表によるビブリオバトル、午後に、マイクロライブラリーサミットに参加してきましたので、写真中心に概要を紹介します。右写真は、「だれも知らない小さな国」を紹介する旭区代表の山口さん(クリック)。

ビブリオバトルは、事前に市内8区で開かれ、そこで選ばれた8人の代表を、この日は、南部4人・北部4人ずつに分けて開催しました。「ビブリオバトル」とは何かについては、一昨年のレポート(こちら)をご参照ください。

定員100名の会場がいっぱいとなり、椅子を追加しても立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。参加者と紹介された本は次の通りです。

◆第1部/南部4区
丘の上の修道院 ル・コルビュジエ 最後の風景/中区・田中さん
だれも知らない小さな国―コロボックル物語 1 /旭区・山口さん
原節子の真実/港南区・竹内さん
僕らが死体を拾うわけ/戸塚区・今成さん

◆第2部/北部4区
ハリエットの道 (リトルベル)/港北区・本田さん
経営者・平清盛の失敗/都筑区・佐々木さん
プリズン・ブック・クラブ/青葉区・西川さん
浜村渚の計算ノート/神奈川区・中沢さん

投票は、数えやすいように、あらかじめ配られた黄色いカードをあげて、「読みたくなった本」に投票。


 
第1部のチャンプ本は、戸塚区の今成さんが紹介した「僕らが死体を拾うわけ」が選ばれました。生物の先生と生徒が「死体」を拾って繰り広げる交友録。


 
第2部は、青葉区の西川さんが紹介した「プリズン・ブック・クラブ」が選ばれました。録音記録をもとに、刑務所での読書会による受刑者たちの変化を描いたドキュメンタリー(下記写真で西川さんは右から2人目。ちなみに並びは左から発表順)。


 
ビブリオバトル終了後、郵便局まで行ったら、日本大通りのイチョウ並木が見事でした。


 
さて、午後からはマイクロ・ライブラリーサミットに参加しました。マイクロライブラリーとは、市民の手によって、さまざまな場所に置かれた本を、図書館の代わりに機能させる試み。この日は、第1部として、市民が本を持ち寄る「まちライブラリー」を提唱して全国に広めている磯井純充さんによる基調講演が行われました。

まず、磯井さんが、「まちライブラリー」を始めるに至った心の変遷を披露。顔の見える関係を取り戻す大切さに気づき、ミクロの視点で始めることにしたそうです。


 
いくつかの事例紹介後、大坂府立大学の事例では、大きなスペースを確保後、本を持ち寄る「植本祭」により0冊からスタートし、1人のスタッフで会員1400人、蔵書9500冊、年間イベント250回にまで成長し、さまざまな成果を生んでいます。


 
また、書店がこの15年ほどで1万店ほど減ってしまい、若い人を中心に本に触れる機会が減っていることに対し、まちライブラリーを増やしてカバーすることを目指しているとのこと。実際、まちライブラリーを中心に、すでに全国に1000以上のマイクロライブラリーが広がっていますので、十分可能な話と感じました。

なお、マイクロライブラリーには、さまざまなタイプがありますが、磯井さんは、5つに分類しているそうです。


 
第2部では、運営者による全国各地の実践事例が紹介されました。


 
伊豆高原の「ゆらら」は、陶芸アトリエを改装して作り、寄合の場となっています。自然豊かな山奥にある隠れ家的存在。迷い込んだ人も見学していくとか。


 
「ゆらら」から車で10分くらいのところには、「Izu Grace Salon」もあります。松下村塾に憧れたキャリアカウンセラーのオーナーが2012年に開設したコミュニティスペース。「みんな何かの専門家」をポリシーに、ワークショップも定期的に開いています。


 
なお、伊豆高原には、もうひとつ、ホテルのサザンクロスのなかに、「癒しと憩いのライブラリー」もあるそうです。蔵書は2万冊! 

埼玉県の鶴ヶ島市では、なんと市役所が「まちライブラリー」を始めました。1階窓口にある本棚を利用しています。


 
市役所に続いて女性センター「ハーモニー」の図書室の本を利用して2カ所目のまちライブラリーも開設。


 
さらに市内3カ所目もできました。Water Ship Cafeという、旅と食をテーマにした本が集まっているカフェです。


 
千葉県の夷隅市には、築140年の古民家を活用したシェアハウスがあり、その隣の納屋を改装して「星空の小さな図書館」も開設しています。


 
東京はお茶の水駅のすぐそばの雑居ビルにあるのは、睡眠をテーマとした「睡眠文化ライブラリー」。寝具メーカーロフテーの蔵書を受け継ぎ、NPO法人として運営しています。現在、希望により不定期開館ですが、来年から定期開館にするとのこと。


 
横浜市磯子区の静かな住宅地の一角には「本とお茶ときどき手紙 草径庵」があります。アパートを改装したとは思えないオシャレな空間。オーナーが哲学科出身で哲学書やエッセイが中心です。


 
最後に、磯井さんが、商業施設にあるまちライブラリーとして、ららぽーと湘南平塚の事例を紹介。


 
また、2016年12月には、北海道は千歳空港のすぐそばに、空き店舗となった商業施設を活用して日本最大のまちライブラリーができるそうです。

 

「まちライブラリー」については、磯井さんの著書『本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた』もご参照ください。また、今回で4回目となったマイクロ・ライブラリーサミット。過去の3回は、すべて本になっていますので、ご興味のある方は、是非、ご覧ください(下記)。

・『マイクロ・ライブラリー図鑑〜全国に広がる個人図書館の活動と514のスポット一覧』 (2013年サミット記録)
・『マイクロ・ライブラリー 人とまちをつなぐ小さな図書館』(2014年サミット記録)
・『コミュニティとマイクロ・ライブラリー』(2015年サミット記録)