◆『文学フリマ』に行ってきた!@東京流通センター/2022年11月20日
『文学フリマ』をご存じですか? 『コミケ』(コミックマーケット)の文学版みたいなもので、プロ・アマ・個人・出版社・ジャンルを問わない、文学作品(同人誌・ミニコミ誌・ZINEなど)の展示即売会です。2002年に東京青山で78店の出店から始まり、年々拡大。現在は、九州〜北海道までの全国6箇所で、合計年に7回(東京は年2回)開催されています。
2022年11月20日(日)に東京流通センターで開催された『文学フリマ』に初めて行ってきました(東京では35回目)。12時から17時までの5時間だけの開催ですが、なんと出店者数1304で、1461ブース。7445名が来場したそうです。何か興味を惹くものがあれば記念に?買って帰ろうと思っていたのですが、会場の活気と熱気に冒され?、7店で11冊計6680円も買ってしまいました(やはり、本好き・メディア好きの人間なので、当然?かもしれません)。そのお店と買った冊子を中心にレポートします。
会場は、2つに分かれており、まず第一展示場(下写真)へ。
最初に目に止まったのは、八王子にある堀之内出版(写真にはなし)。以前この出版社の『99%のための経済学』を購入し、発刊記念オンラインシンポジウムを聴講していたので、たまたま知っていましたが、『POSSE(ポッセ)』という労働問題をテーマとした雑誌の発行元として、知る人ぞ知る出版社でした。しかし、他所でも手に入るものをここで買う必然性はないので、次へ。
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次に目に留まったのは、民俗学専門ZINEと銘打った『民俗学は好きですか?』という個人雑誌(著者は本人のみ)。2019年に1号を出し、現在までに8号を出しています。A5判本文24ページの手作り冊子で400円しますが、編集後記に「これからも書き続けます。作り続けます。自分が何者であるかを証明し続けるために」と書いてあるのを見て、2冊買ってみることにしました。もちろん内容も、ちょっと興味があったので。
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次に買ったのは『みほ式 絵本新聞』総集編。1991年が第1号のB5判に裏表の手書きの絵本情報紙。当初月に1~2回発行だったのが、年1~3回となり、途中7年のブランクを挟んで、2018年から復活。53号まで全部を製本した冊子です(1000円)。決して読みやすい手書きではないものの、1冊の本にまとめると、その歩みと存在感がヒシヒシと感じられ、これは思わず買ってしまいました。テレビで、73年続く家族新聞の話を見たばかりで、そのイメージも重なりました。下記は、無料配付中の今月発行した54号。
ちなみに、昔、鈴木書店という専門書の取次にいた井狩春男さんという方が、『日刊まるすニュース』というB5判手書きの新刊案内を出していましたが、欄外までびっしり書き込むスタイルはよく似ているので、知っていてモデルにしたのかもしれません。
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次に気になったのは、『くむ組む』の名で、著者が気になったテーマを調べてまとめた本を、これまで12冊出している人。『国立国会図書館本』①②と『分類コード本』の合本版(600円)と『著作権発展本』(400円)『地方データ本①②』(各300円)を買いましたが、他にも『左右本~なぜそれが右でそれが左なのか~』『くまぬいぐるみ本~移行対象としてのぬいぐるみ~』(くまのぬいぐるみがかわいい理由を探る冊子)『盗電本~電気窃盗の歴史からみる無体物窃盗~』『商標本~商標を先に取られた時に対抗する方法~』などなど。最新刊は『ネイル心理本~ネイルをしたいと思う気持ち~』。大人の自由研究というか、自由に冊子にまとめる楽しさが感じられました。
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第一会場で最後に買ったのは『日々の読書会通信 vol.0』(300円)。 読書会を主宰している人が、年6回の課題図書6冊の内容を冊子にまとめ、vol.3まで出しています。vol.0 のみ1枚ものですが、参加者の鼎談もあり、実は私も読書会を主宰しているため、参考・刺激となりました。
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その後、第二会場へ。
2会場をどう分けているのかわかりませんが、第二会場の方が、文学・短歌・俳句など、文字通り文学っぽい出店が多いようです。
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こちらで最初に買ったのは、『書評王の島』④(定価800円が500円)。書評家の豊崎由美さんが、以前『池袋コミュニティ・カレッジ』で開いていた「書評の愉悦 ブックレビュー読み書き講座」の卒業生とともに出していた雑誌とのこと。編集・デザインは、大手出版社のものと遜色なし。購入したのは2010年のもので、2007~2010年に毎年1回出して4号で終わったみたいです。しかし、豊崎由美さんの本は、大森望さんとの『文学賞メッタ斬り!』シリーズが好きで、豊崎さんの名前を見つけて買ってしまった次第です。
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そして、この業界?の極め付きの本を見つけてしまいました。『ふたりのアフタースクール』。小説家の太田靖久さんと、作家・編集者の友田とんさんによる「作ったZINEを本屋に売り込みする話」4回連続対談イベントを本にしたもの(1980円)。しかも、これまで買ったものとは異なり、この日に間に合わせて完成した本屋ルートで売れるISBNコード付の本。
著者の一人友田とんさんは、私家版の本『「百年の孤独」を代わりに読む」』を皮切りに、「代わりに読む人」の名で、積極的に「ZINE」関連の活動を推進しています。この日は、無線の端末を持ち込み、イベント会場なのに、なんとカード決済対応。買い過ぎてお金がなくなった人も、しっかり捕まえられますね。
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最後に買ったのは、お隣に出店していた店で『百書店大賞2020』(500円)。「本屋大賞」とは異なり、順位づけはせず、百の書店が勧める百冊の本を紹介した冊子。このブースは、たぶん「双子のライオン堂」という赤坂にあるユニーク書店のもの(詳しい紹介記事は、こちら)。実は、同書店は、以前「みなまき一箱古本市」にたしか出店していたこともあり、当時この冊子を見つけ、「面白いけど500円は高いかな」と、買おうか買うまいか悩んだ記憶があるのです。今回、再会を記念して?めでたく購入しました。「百書店」の企画自体は、2016~2020年と続きましたが、この号が最新(最終?)となります。
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以上、購入冊子を中心にレポートしてきましたが、一番感じたことは、想定した以上に、ネット全盛の時代にあっても、紙のメディアを愛し、こだわり続ける人は、まだまだ多いという厳然たる事実です。出店者も、毎回増えているのですから、インターネットのおかげで、メディアがパーソナル化していることに歩調をあわせ、紙メディアもパーソナル化が進展・拡大しているといえるのかもしれません。
ちなみに、調べてみたら出店料は、机半分(90cm)で6500円。思ったより高かったですが、あの人出・あの活気なら、儲かるほどではなくても、ほとんどの出店者が黒字になっているのではと思いました。とまれ、なかなか刺激的なイベントでした。次回東京では、2023年5月21日(日)に、同会場で開催されます(出店締め切りは3月1日)。詳しくは、こちら。